オヤニラミの病気

はじめに 

 安定した良好な水槽環境では、病気になることは非常に少ないが、夏場など水温が高く なりやすい時期は、水質が悪くなりやすいことに加え、オヤニラミにとってもストレスになるため、体力の低下から、病気に罹りやすくなりがちである。

 ここでは、オヤニラミが、かかりやすい病気について簡単にまとめる 。もちろん、日常の水質管理により病気を未然に防ぐことが重要であることは言うまでもない。

代表的な病気

 代表的な病気と症状、治療法について以下にまとめる。 これらの病気は、症例により区分されるものであり、実際の症状としては、それぞれを併発する場合が少なくない。早期発見、早期治療のためにも、日常の観察が重要である。 (※危険度については、概ねの目安として判断してください。また、併発する場合もあります。)

 なお、病気が発生した水槽については、水質が悪化していることが想定されるため、換水等の適切な対応が必要である。

 1.マツカサ病 (危険度★★★)

原因と症状:細菌による感染症。身体が膨らんで鱗が立ったり、眼球が飛び出してくる。 (夏場など高水温で水質が悪化した水槽で発生しやすい)

治療法:発病した魚は隔離し、グリーンFやバラザン、エルバージュなどによる薬浴を行う。(死亡率が高く、症状が進行している場合の治療は困難)あら塩を少々投与する(※あら塩の投与量に注意)

※軽度の場合は民間療法である鷹の爪療法も効果がある。

※投与する薬を混ぜて使わない。

 2.白点病 (危険度★★)

原因と症状:鰭や体表に白点状に繊毛虫が付着し、粉をまぶしたような状態になる。

治療法:発病した魚は隔離し、メチレンブルーやグリーンF等で約3〜5日薬浴させる。

※水温の高い時期はあまり発症しない。

 3.ウオジラミ (危険度★★)

原因と症状:チョウともよばれる5mm程度の吸血動物で、吸い付かれた魚はかゆがって、体表を擦り付けるため、傷跡から細菌感染しやすくなる。

治療法:発病した魚は隔離し、ウオジラミをピンセットで除去する。傷跡から細菌感染を予防するため、メチレンブルーなどで薬浴させる。

 4.水カビ病 (危険度★★)

原因と症状:スレや傷が原因で水生菌が寄生して綿がついたような状態になる。放っておくと組織が崩壊していく。

治療法:発病した魚は隔離し、綿状のものをピンセット等で除去し、メチレンブルー等で消毒する。あら塩を薄く投与し、薬浴させる。

※柔らかい歯ブラシ等も使えます。患部を傷つけないように注意します。消毒の際、柔らかい筆なども使えます。

 5.カラムナリス病 (危険度★★★)

原因と症状:細菌性の疾病。エラやヒレ、口などに患部形成する。患部は黄白色を示す。エラに患部が形成される場合は、外観的には異常に気がつかない場合が多い。エラに形成される場合は特に“エラぐさり病”と呼称され、外観的には異常が見られないにもかかわらず、ふらふらと泳ぎ、呼吸が速くなるなどの症状を呈する。

※初期には、異常に気がつかない例が多いです。

治療法:発病した魚は隔離し、グリーンFやバラザン、エルバージュなどによる薬浴を行う。(死亡率が高く、症状が進行している場合の治療は困難)あら塩を少々投与する(※あら塩の投与量に注意) 呼吸の困難な生体については、体力を消耗させないようにエアレーションを行う。

※軽度の場合は民間療法である鷹の爪療法も効果がある。

※投与する薬を混ぜて使わない。

 6.運動性エロモナス症 (危険度★★)

原因と症状:細菌性の疾病。 体表に出血斑を示す。放っておくと、他の疾病を併発する場合も少なくない。

治療法:発病した魚は隔離し、グリーンFやバラザン、エルバージュなどによる薬浴を行う。

※軽度の場合は民間療法である鷹の爪療法も効果がある。

※投与する薬を混ぜて使わない。

薬浴水槽(トリートメント・タンク)

 病気の魚を治療するための薬浴水槽(トリートメント・タンク)は、使用頻度の高い薬品とともに常備しておきたい。また、輸送中に容器に吻をぶつけたり、スレによる傷など、ストレスで弱った魚の病気を予防する上でも効果的である。

 トリートメント・タンクは、市販の45cm水槽程度で十分である。濾過は外掛け式のメンテナンスの容易なものが良いと思われるが、あまり水流を強くしないように注意する。(エアレーションの併用や流木等で水流を弱める工夫も効果的。)なお、濾過は物理濾過によるものが適当である。(濾材として活性炭などの吸着系のものは薬効成分を吸着する。)

 砂利を敷く場合は、大磯砂など、角のない底砂を薄く敷き、流木や石などで隠れ場所を作ってやる方が魚が落ち着く。(あまり複雑にしないこと。常に魚が見える程度がよい。)

 水草は、植えない方がよい。(塩分や薬品により枯れてしまい水質悪化を招く一因になる)。

 オヤニラミは薬品への耐性が強い方ではないので、各薬品の処方よりも、やや少な目に投与した方が良いと思われる。また、病気の個体については体力が低下しているため、水温あわせは通常より慎重に行うこと。

 ※薬浴水槽への移動は少なからずストレスを与えることに留意。

 ※飼育水槽で薬浴を実施する場合、薬や塩分の使用により、病気の原因となる生物を弱らせて死滅させると同時に、濾過などに有用な生物も弱らせて死滅させることに繋がるため、結果として水質の悪化に繋がりやすくなります。したがって、トリートメントタンクはできるだけシンプルなものとして、無菌室に近いような環境を前もってつくっておく理由はここにあります。飼育水槽内で薬浴を実施する場合は、強制的にこれに近いかたちにしてしまうわけですから、換水等を多めに、水質の悪化を防ぎつつ、病状の進行を観察しながら、徐々にもとの水質環境に移行させながら対応していくことになります。

民間療法

 病気の魚を治療する方法として、日本古来?から伝わる民間療法がいくつかある。

 1.鷹の爪治療

白点病等に効果が高いと思われる治療法。 初期であれば、細菌性の疾病にも効果を発揮する。また、薬浴により調子を崩したオヤニラミにも効果的であるようである。60cm水槽であれば、3〜4本程度をオヤニラミが間違って食べてしまわない程度に切って投入する。量については、様子を見ながら加減することが望ましい。

比較的、いろいろな病気に効果があり、水草にもあまり影響が確認されないため、漢方薬的に使える。

※種は投入しなくても良い。もちろん、鷹の爪を切った後に目をこすったりしないこと。

 2.塩水治療

塩分濃度による浸透圧を利用して、病原菌や寄生虫を殺す治療法である。鯉や金魚などの白点病等に効果が高いといわれる塩水治療であるが、病気で少し弱っているオヤニラミにはあまり向かないように思う。過去4回チャレンジしたが、 あまり良い結果は得られなかった。(予防の意味での塩水浴についても、観察が必要である)

なお、塩水療法の効能としては、呼吸器であるエラの細胞を活性化させることによる呼吸機能の促進効果、半透膜の浸透圧調整効果がある。自然治癒力を促進し、体内外の新陳代謝を活発にさせるため、病気予防の意味で、トリートメント・タンクでの使用が効果的である。

 このほかにも、ビタミンドリンクで、白点病を治療する方法もあるようだが、効果については、成分にもよると思われる。現段階では、よく分からないので、割愛する。

 民間療法について、情報を各方面から募った結果、興味ある傾向が得られたので、参考として、以下にまとめてみる。

  1. 塩水治療に向かない魚がいること:、粗塩投入に伴う天然ミネラル成分により、水の硬度が高くなり、悪影響があると思われる。硬度にうるさくない魚種であれば問題がなさそうである。
  2. 鷹の爪治療で、格段の効果が確認された魚は比較的、大型の肉食魚が多い?:ライギョやナマズ、ブラックバス、金魚を飼育している方から効果があるとの情報をいただいた。(特に スネークヘッド類を飼育している方からの情報が多い)。
  3. 鷹の爪治療は水草に害が無い?:塩水治療は、水草に影響があるが、鷹の爪治療により、水草に影響があったとの情報は得られなかった。害がないと断言はできないが、現段階では、影響は小さいものと判断される。

その他のかかりやすい病気

 代表的な病気として、寄生虫等の外因性の病気について も前述したが、オヤニラミは、これらの病気については、比較的、耐性が強い魚である。すなわち、こうした症状が顕れるということは、水槽内の水質がかなり悪化していると判断される。

 オヤニラミの水槽内における飼育下で最も多いと思われる病気は、エサに起因するものであることが多い。

 鮮度の良くないエサを与えると、体調を崩して死亡することも少なくない。急に餌を食べなくなり、だんだんと腹部が腫れてくるような症状が典型であるが、軽度の場合は、清浄な水質であれば回復する。また、こうした症状により体力が低下してくると、前述の代表的な病気にかかる危険性が高くなる。

 エサの与えすぎは、消化不良を起こす場合もあり、注意が必要である。

 オヤニラミは個体によって偏食の傾向がみられることが少なくない。なお、栄養不良の問題、およびこれに起因するような奇形などに代表される病気の問題については、生餌を与える場合においてはむしろ少なく、どちらかというと単独の乾燥飼料や人工飼料による場合などに疑われる場合がある。ただし、最近の人工飼料については栄養のバランスに留意しているものがほとんどであり、このような心配は少なくなったと考えられる。いずれにしても、エサについては数種類を用意し、栄養の偏りに留意することが望ましい。

 ※栄養の偏りによる病気として、目の白濁やポップアイ、背曲がりなどが疑われます

 ※目の白濁は、スレによる外傷の場合と細菌性の疾病による初期症状の場合が疑われます。

病気を未然に防ぐために

 病気を未然に防ぐためには、やはり日常の観察が重要である。一般に水質が悪化してくると、食欲がなくなってくることが多い。

 換水後に旺盛な食欲を見せる場合は、換水前の水質が悪化していたものと考えられる。

 一般に水槽における水流は、濾過のためのフィルターと連動している場合が多いと考えられるが、病気を未然に防ぐ意味でも、適切な水流の維持が重要である。フィルター等が目詰まりしてくると、自然と水流が弱くなってくるが、水流が弱くなると水槽内の水が滞留するようになり、病気の発生を招くことが多い。

 また、水草の生長の具合や水の色や匂い、混泳魚などの他の生体の状況等、水槽内の水質の状況を考察するための判断材料にもなる点にも留意しておく必要がある。

ムジナモとタヌキモ (2000.11.21撮影)

病気かな?と思ったら・・・

 “病気かな?”と思ったら、その症状をよく観察し、速やかに対応する必要があります。

 日常の観察により“今日はちょっと体色がおかしいな”“食欲がないな”と思ったら、水質の悪化を疑ってみてください。フィルターが目詰まりして、水の勢いが弱くなったりしていないでしょうか。水の色や匂いはどうでしょうか。

 早期であれば、換水だけでも元気になる場合も多いです。

 しかし、換水後も状態が好転せず、症状が顕著になってきた場合、早期に治療が必要です。

 上記に紹介した“代表的な病気”の基本的な対応は、ほぼ同様の手法であることに気がつくと思います。例えば、私の場合であれば、薬品はグリーンFしか常備していません。早期であればあるほど、少ない薬剤で効果的な治療が可能になります。

 治療する場合は、何処がどのようになっているのかを判断しなければなりませんが、病状が進行してくると耐性が落ちてきますので“代表的な病気”を併発するようになります。

 併発がはじまると、病状は加速度的に進行することが多く、こうなってくると、患部に直接、薬品を浸透させる半外科的な薬浴治療も必要になってきますが、死亡する危険性も高い治療法でもあります。

 しかしながら、病気にならないようにと、定期的に薬剤を投与するような薬漬けのような飼育も良くありません。あまり薬品を用いることは、生体の耐性を落とすことになりますので、元気なものまで病気にしてしまう危険性もあります。

 できるだけ薬品を使わず、病気を治したいものですが、薬品治療が必要だと判断される場合には、早期に実施することが重要です。

  

 

※ ppm (ピーピーエム):100万分率(100万分の1)のこと。

※民間療法についてこれ以外の方法をご存じの方は教えていただければ幸いです。

 

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