2005.10.31更新
E = C で定義された複素数値関数 fn(z) = an-1 zn-1 を第n項とする関数項級数を
ベキ級数 もしくは 整級数 といい、通常
Σn≧0 an zn もしくは Σn=0 an zn と書く。
補題3(p13): ベキ級数 Σn≧0 an zn が z0 ≠ 0 で収束すれば、
|z|<|z0|を満たす z で絶対収束する。
よりくわしく、
0 ≦ r < |z0|を満たす任意の r に対し、
Σn≧0 an zn は閉円板 |z|≦ r でノルム収束(したがって絶対かつ一様収束)する。

証明:

z0 ≠ 0 で Σn≧0 an zn が収束するとは、
∀ε>0 に対しある n0 があり、n, m ≧ n0 (n > mとする)ならば
Σk=m+1n ak z0k|<ε
となることと同値である。
とくに上式の m を n-1 で置き換えれば、 Σk=nn ak z0k = an z0n なので、
n ≧ n0 ならば
|an z0n|<ε
が成り立つ。
これはふつう「収束する級数の一般項は 0 に収束する」といっていることに相当する。
n < n0 の範囲の |an z0n| は有限個なので、 すべての n に対し ある M > 0 があり
|an z0n|< M
となる。
このとき、 |z|<|z0| であれば、 |z|≦ q|z0| (0 < q < 1) を満たす q が存在する。
よって |z|<|z0| を満たす z に対し、
|an zn|≦ |an (q |z0|)n| = |an z0n| qn < M qn
が成り立つ。
等比数列の和の公式より、Σk=1n M qk = M (1 - qn)/(1 - q) だから、n →∞とすると
Σn=1 M qn = M /(1 - q) となるので M qn を項とする級数は収束する。
|an zn| < M qn だから、 Σn≧1 an zn は収束する優級数を持つので、 補題2 により
ベキ級数 Σn≧0 an zn は、 |z|<|z0|を満たす z で絶対収束する。

あるいは、上のように 0 < q < 1 を使わなくても、
|an z0n|< M より |an| < M /|z0n であるから、
|z|<|z0|ならば

|an zn| = |an||z|n < (M /|z0n) |z|n = M (|z|/|z0|)n
で、|z|/|z0| < 1 より Σn {M (|z|/|z0|)n} は収束する優級数としてもよい。

次に後半の証明。
0 ≦ r < |z0|を満たす任意の r に対し、 Σn≧0 an zn
閉円板 |z|≦ r でノルム収束することを示す。
|z|≦ r < |z0| のとき、

|an zn| = |an||z|n < (M /|z0n) rn = M ( r / |z0| )n
である。これは閉円板 |z|≦ r 内の任意の z で上式が成り立つので、
‖an zn‖ < M ( r / |z0| )n
で、r / |z0| < 1 であるから Σn {M ( r / |z0| )n} は、Σn ‖an zn‖ の収束する優級数。
よって z が閉円板 |z|≦ r に含まれるとき Σn≧0 an zn はノルム収束、
したがって絶対かつ一様収束する。(証明終)

(p14): ベキ級数 Σn≧0 an zn が与えられたとき、
λ = lim~ (|an|)1/n とおき、
ρ = 0 (λ = +∞ のとき), +∞ (λ = 0 のとき), 1/λ (0 < λ < +∞ のとき)
とすれば、 Σn≧0 an zn は、
|z|<ρ のとき絶対収束し、 |z|>ρ のとき収束しない(発散する)。

この ρをベキ級数 Σn≧0 an zn収束半径 と呼ぶ。
|z|<ρ を満たす z の集合を 収束円板 と呼ぶ。
ρ を与える上の式を Hadamard の公式 という。

証明:

λ = lim~ (|an|)1/n
lim~ は上極限の意味である。
上極限の定義を確認しておく(杉浦「解析入門I」p364):
実数列 (an)n≧1 に対し、
An = {am|m ≧ n}
ln = sup An
とおく。sup An は ∞になることもある。
An は具体的には、
A1 = {a1, a2, a3, … }
A2 = {a2, a3, … }
A3 = {a3, … }

という集合なので、 A1 ⊃ A2 ⊃ A3 ⊃ … となる。
よって 実数列 (ln)n≧1 は単調減少列: l1 ≧ l2 ≧ l3 ≧ …
(ln)n≧1R ∪ {±∞} の点列とみなしたとき、
∀n に対し ln ≧ -∞ であるから、(ln)n≧1R ∪ {±∞} の下に有界な単調減少列。
よって ある R ∪ {±∞} の元 l に収束する:
l = limn→∞ ln
この l を (an)n≧1 の上極限といい、
l = lim supn→∞ an = lim~ an
と書く。

このとき、l のε近傍には無限に多くの an が含まれ、
l+ε ≦ an となる an は高々有限個である。
ふつうの極限では、an ≦ l - ε となる an も高々有限個(無限個あると収束しない)であるが
上極限の場合には an ≦ l - ε となる an は無限個あってもよい。

例えば、
1, -1, 1, -1, 1, -1, …
という数列 (an) は、1 のどんな小さな近傍にも無限個の項を含み、1より大きいところには項がないので、
lim~ an = 1。しかし、lim an は存在しない。

まず 0 < λ < +∞ のとき を考える。
|z|<ρ のとき:

まず z = 0 のときは Σn≧0 |an zn| は明らかに 0 に収束する。
z ≠ 0 のときを考える。
|z|<ρ = 1/λ より、λ < 1/|z|。
λ = lim~ (|an|)1/n
であったから、
上極限の定義より λ < (|an|)1/n となる n は高々有限個。
よってある n0 があり n > n0 ならば (|an|)1/n ≦ λ である。
λ < q < 1/|z| を満たす q ∈ R をとると、
n > n0 ならば (|an|)1/n ≦ λ < q だから、 |an| < qn
ゆえに |an zn| < (q |z|)n
q < 1/|z| より q |z| < 1 なので、級数 Σ (q |z|)n は収束する。
ゆえに Σ|an zn| の優級数 Σ (q |z|)n が収束するので、
Σn≧1 an zn は絶対収束する。

|z|>ρ のとき:

|z|>ρ = 1/λ より、λ > 1/|z|。
λ = lim~ (|an|)1/n であったから、
λ-ε>1/|z| を満たすε>0 があって (λ-ε, λ+ε) は 無限個の (|an|)1/n を含むので、
(|an|)1/n の部分列 (|ap(n)|)1/p(n)で (λ-ε, λ+ε) に含まれるようなものが取れる。
このとき (|ap(n)|)1/p(n) > λ-ε > 1/|z| より、|ap(n) | > (1/|z|)p(n)
したがって |ap(n) zp(n)| > 1 となる。
よって、実数列 (|an zn|)n≧1 は 0 に収束しない部分列を持つ。
したがって Σn≧1 an zn は収束しない。

λ = 0 のとき:

λ = lim~ (|an|)1/n = 0 のときは、
ρ = +∞ と定義される。 このとき ∀z ∈ C において
Σn≧1 an zn が絶対収束することを示せばよい。
lim~ (|an|)1/n = 0 より、 ある n0 があり、n > n0 ならば (|an|)1/n ≦ 0。
ゆえに n > n0 ならば |an| = 0 である。
ゆえに、n > n0 ならば |an zn| = 0 であるから、
Σn≧1|an zn| は有限和 Σn=1n0 |an zn| に等しいので収束する。

λ = +∞ のとき:

λ = lim~ (|an|)1/n = +∞ のときは、 ρ = 0 と定義される。
このとき z ≠ 0 ならば Σn=1n0 |an zn| が発散することを示せばよい。
lim~ (|an|)1/n = +∞ とは、 ∀M ∈ R に対し、ある n0 があり、
n > n0 ならば (|an|)1/n > M となることである。
このとき |an| > Mn ゆえに |an zn| > Mn|zn| = (M |z|) n
そこで z が決められたとき、M |z| = q > 1 となるような M をとると、
|an zn| > qn > 1 となり、 an zn は 0 に収束しない。
よって Σn≧1 an zn は発散する。

証明終。


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    $Id: 03.html,v 1.10 2005/11/18 04:18:32 kame Exp $